記憶と怠惰
父方の祖母の背中に揺られながら畑と少し古びた一軒家が並ぶ、車なんてほとんど通らない道で少し高くなった場所から景色を眺めていた。
近所の人と時折すれ違い、そのたびに祖母は文字通り立ち話をしていた。私はこっそり聞き耳を立てていた。
まず第一声に孫である私を可愛いと褒め、私の話が終わったら天気の話やら作物の話をしていた。ような気がする。
私の一番古い記憶だ。
今となっては高い建物が並んでいる他人ばかりの街を一人で歩いている。
街にも季節にも匂いがあることを知った。
家で横になっていてもご飯が届く生活にも驚かなくなった7月。
祖母にはもう何年も会っていない。
どんな環境で、何を思って生きているのかも知らない。お互いに。
それでもだましだまし息をしてみている。
帰る場所があるから私は何処にでも行ける。
また会えたとしても、もう二度と会えなくても。