一生好きな人
あれは冬の事だった
初めて会った2つ年上の彼と寝た
次の朝起きてから突然海に行きたくなり、わたしは「海連れてって!」とわがままを言った
上越までの二時間だか三時間だか、彼の愛車の中で何を話したか今はもう覚えていない
海に着いて特にすることもなく波沿いを二人で20分程歩いた
潮の匂いに胸が踊りお気に入りのマーチンの靴で海に入り靴を駄目にしてしまう程だった
まあ、今もその靴は何故か捨てられず玄関で眠っている 靴に耳を当てても海の音は聞こえない
いつか聞こえるのではないかと信じている
気付けば押しては返す日々を過ごし、わたしたちは海を見る必要なんて無くなった
口に残るのは塩辛さではなく甘味と少しの苦味だけだった
今はもうそんな後味排水口に流してしまった
無かったことにできないのにしようとした
そういえば今年の冬は海に行ってみたいなあ
今度は素足で、誰にも言わずに、
そしてそのまま泡になって消えてしまえばいい